2014年2月21日金曜日

岩田彩志 「動詞事象と移動事象はどのように関連しているか?―Eat one’s wayを巡って―」

「動詞事象と移動事象はどのように関連しているか?―Eat one’s wayを巡って―」

                岩田彩志

この発表は二つの部分からなる。前半では、way構文の「手段(means)」タイプとされているものを再考する。一般にway構文には様態タイプと手段タイプがあるとされている。例えば(1)(2)の二通りの解釈に曖昧であるとされている(Jackendoff 1990, Goldberg 1995)。
(1)  Sam joked his way into the meeting.
(2) a.  Sam went into the meeting by joking.   (手段)
   b.  Sam went into the meeting joking.     (様態)
ここで第一の解釈を「手段」と呼ぶことに関して、実は問題がある。その問題を突き詰めていくと、実は動詞事象が移動事象を「可能化」している、と捉えるべきであることを示す。実際に、従来「手段」解釈とされていたものの大部分は、容易に「可能化」解釈として捉え直すことが出来る。
 しかし一見したところ、「可能化」という概念が上手く当てはまらないような例も見つかる。後半では、その一例としてeat one’s wayを取り上げる。(3)に「可能化」の解釈を機械的にあてはめると、「食べることが、パン等を消費することを可能にする」という奇妙な解釈を生みだしてしまう。
(3)  He ate his way through bread and butter and ham and pickles.

しかしCroft (2009)のフレーム意味論的分析を援用すると、eat one’s wayはやはり「可能化」で説明出来ることが判明する。



岩田彩志

2014年2月10日月曜日

石川慎一郎 「コーパス研究:これまでとこれから」

コーパス研究:これまでとこれから
石川慎一郎

世界初のコーパスとされるBrown Corpusが公開されたのは1964年,本格的な言語研究に耐えるBritish National Corpusが公開されたのは1994年です。今年は2014年ですから,Brown Corpusから半世紀,BNCから20年が経過したことになります。この間,こーパスの規模はもちろん,サンプリングやアノテーションの精度も飛躍的に向上し,言語研究におけるコーパスの影響力はかつてないほど高まっています。しかし,その一方で,コーパスやコーパス分析手法のコモディティ化は,狭義のコーパス研究やコーパス言語学研究の消滅(ないしは発展形解消?)を意味しているという見解も示されています。本発表では,コーパス言語学の小史をひもときながら,コーパスのこれまでを概観し,あわせて,コーパスのこれから,言い換えれば,言語研究や言語教育において,今後,コーパスが果たしうる役割について考えてみたいと思います。

参考文献 
McEnery, T., & Hardie, A. (2012). Corpus Linguistics. CUP. [石川慎一郎訳(2014)『概説コーパス言語学:手法・理論・実践』ひつじ書房]

講師紹介
神戸大学文学部卒。神戸大学文学研究科,岡山大学文化科学研究科修了。博士(文学)。現在,神戸大学国際コミュニケーションセンター/国際文化学研究科外国語教育論講座教授。主著として『英語コーパスと言語教育』,『ベーシックコーパス言語学』他。