2013年3月5日火曜日

講師紹介 山口治彦


 山口治彦(神戸市外国語大学) 
 神戸市外国語大学英米学科教授。語りの専門家として発話の場(コンテクスト)がことばにもたらす影響について研究。著書に『語りのレトリック』『明晰な引用,しなやかな引用』など。近年は役割語研究でも知られる。




「翻訳が映す社会:mangaanimeから見えてくるもの」
発表要旨
この発表では,日本のマンガやアニメが翻訳を通してどのようなかたちで(おもに北米地域に)提示されている/いたかを跡づけます。日本独自の文化や社会のもとに発展したマンガ・アニメが,異なる文化土壌に移入されるときの変更点に着目することで,このディスコース・ジャンルにかかわる文化的・社会的制約について考察します。
 もう少し具体的に言いますと,初期の(1990年代前半の)マンガの英語翻訳では,画像を左右を逆転させることで英文のふつうの読み方に合わせるflippingという手法が一般的でした。ところが,現在ではflippingの手法はとられず,右から左へ読むという日本語のオリジナルを尊重した形での翻訳がふつうです。こうした流れをまず,『めぞん一刻』や『風の谷のナウシカ』の英語翻訳の初版と改訂版の画像を参考に跡づけるつもりです。
 また,『NARUTO』や『One Piece』のマンガ翻訳およびアニメの吹き替え・字幕翻訳を比較し,セクシャルな表現,暴力的な表現が翻訳メディアの違いに応じてどのように翻訳されたり,画像(映像)の修正が起きたりしているかを見ることによって,北米地域でのマンガ・アニメの受容態度について,お話ししようと思います。

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