2013年3月24日日曜日

「研究としての通訳翻訳」



関西大学英語学会第35回例会のご案内
参加費は無料です。非会員の方の参加も歓迎いたします。spiralcricket@gmail.com までご一報ください。

日時: 2013324 (日曜日)  1330 1700
会場: 関西大学  第一学舎  E402教室

1.  総会 (13:3013:45)  会長挨拶、2011(平成23)度活動報告、2011年度会計報告、その他
2.  研究発表 (13:5014:20)
アシガイ・デルゲルマー(モンゴル文化教育大学)
 「翻訳単位としての慣用句等価性を中心として

           14:40-15:40 話題提供 (シンポジスト各20分)

シンポジスト  染谷泰正(関西大学)                            「通訳研究の現状と課題」
         豊倉省子(文芸翻訳家、神戸女学院非常勤講師)
「英語教育における翻訳をめぐる最近の研究動向」
         山口治彦(神戸市外国語大学)
「翻訳が映す社会:mangaanimeから見えてくるもの」
ディスカサント アシガイ・デルゲルマー
司会      鍋島弘治朗(関西大学)

 懇親会  居酒屋すっぽん   1745分~(2時間程度)
  懇親会費は一般4000円、学生3000円の予定です。当日頂戴いたします。

2013年3月23日土曜日

シンポジウム トピックリスト


1. 等価性の問題―構造の等価、意味の等価、効果の等価―
2. 異化翻訳(foreignization) と同化翻訳(domestification)―「暑さが私をだるくさせる」考―
3. スタイルとしての翻訳―役割語、構文、翻訳調、「吹き替え」調―
4. {言語・意味・文化}の{普遍性と相対性}―「狸」はraccoon dogか―
5. 通訳と翻訳の共通問題

2013年3月5日火曜日

「研究としての通訳翻訳」シンポジウム要旨

通訳翻訳に関する興味は大学レベルで盛んになっているように思われるが、その研究としての手法はいまだ十分に確立されているとは思われない。本シンポジウムでは、通訳、翻訳を利用した教育、英語学の立場から通訳翻訳がどのように研究として成立し、どのような切り口が興味深い論文を産むのかについてフロアを交えて検討したい。さらに、日英の問題を日ーモンゴル語の通訳翻訳の観点から見ることにより通訳翻訳一般の問題に敷衍して検討する。

講師紹介 山口治彦


 山口治彦(神戸市外国語大学) 
 神戸市外国語大学英米学科教授。語りの専門家として発話の場(コンテクスト)がことばにもたらす影響について研究。著書に『語りのレトリック』『明晰な引用,しなやかな引用』など。近年は役割語研究でも知られる。




「翻訳が映す社会:mangaanimeから見えてくるもの」
発表要旨
この発表では,日本のマンガやアニメが翻訳を通してどのようなかたちで(おもに北米地域に)提示されている/いたかを跡づけます。日本独自の文化や社会のもとに発展したマンガ・アニメが,異なる文化土壌に移入されるときの変更点に着目することで,このディスコース・ジャンルにかかわる文化的・社会的制約について考察します。
 もう少し具体的に言いますと,初期の(1990年代前半の)マンガの英語翻訳では,画像を左右を逆転させることで英文のふつうの読み方に合わせるflippingという手法が一般的でした。ところが,現在ではflippingの手法はとられず,右から左へ読むという日本語のオリジナルを尊重した形での翻訳がふつうです。こうした流れをまず,『めぞん一刻』や『風の谷のナウシカ』の英語翻訳の初版と改訂版の画像を参考に跡づけるつもりです。
 また,『NARUTO』や『One Piece』のマンガ翻訳およびアニメの吹き替え・字幕翻訳を比較し,セクシャルな表現,暴力的な表現が翻訳メディアの違いに応じてどのように翻訳されたり,画像(映像)の修正が起きたりしているかを見ることによって,北米地域でのマンガ・アニメの受容態度について,お話ししようと思います。

講師紹介 豊倉省子

豊倉省子(文芸翻訳家、神戸女学院非常勤講師)
                          

研究者&大学非常勤講師、そして翻訳家という三つの顔を持つ。関西大学博士後期課程でTILT(Translation in Language Teaching)をテーマに研究中。『マルベリーボーイズ』、『妖精の女王』など訳書多数。

シンポジウム発表要旨 

「英語教育における翻訳をめぐる最近の研究動向」

外国語教育において、翻訳は百年以上もの間、正当な理由もなく冷遇されつづけてきた。だが、今、その流れに変化の兆しが見える。21世紀の到来とともに、従来の批判から一転、言語教育における翻訳が注目を集めつつある。本発表では、Translation In Second Language Learning and Teaching(Witte, Harden, Harden 2005)からいくつかの論文を紹介し、今、まさに大きなパラダイムシフトを迎えつつあるTILTの最新の研究動向を概説するとともに、TILTの効用と意義、そして今後の展望について、発表者の見解を示す。

講師紹介 染谷泰正


 染谷泰正(関西大学) 

関西大学外国語学部教授
外国語学部ホームページ記事「通訳翻訳研究の魅力」
染谷泰正ホームページ

日本における通訳翻訳研究および通訳教育理論先駆的研究者。『英文ビジネス文書完全マニュアル』など著書多数。

シンポジウム発表要旨
 「通訳研究の現状と課題」
本発表では「通訳研究」という分野にあまり馴染みのない方を想定して、その歴史と現状を概観する。通例、通訳研究は「通訳翻訳研究」(Interpreting and Translation Studies) という分野に包括され、その上位分野として言語学(社会言語学や応用言語学を含む)とコミュニケーション学がある。歴史的には比較的新しい分野であり、1950年代以降、ほぼ10年から20年間隔で研究パラダイムのシフトが起こっている。50年台は「実務の時代」、60年台は「言語学の時代」、70年台に入ると主として同時通訳プロセスの解明を目標とした認知的・心理学的な取り組みが増え(「認知の時代」)、90年代に入るといわゆる "Social Turn" と呼ばれる時代に入る。ちなみに、日本で通訳に関する最初の学会が設立されたのは2000年のことである。そうした中で、通訳研究の具体的な対象も少しづつ変化(あるいは拡張)しながら現在に至っている。本発表では、これを「基礎研究」と「応用研究」という2つの観点から、それぞれどのようなテーマが扱われてきたかを概観するとともに、今後の通訳研究および通訳教育の方向性について若干の提言をしたい。

講師紹介 アシガイ デルゲルマー


アシガイ・デルゲルマー(Ashgai Delgermaa)
「翻訳単位としての慣用句―等価性を中心として―」


モンゴル文化教育大学准教授

モンゴル出身。国際交流基金「博士論文執筆者フェローシップ」プロジェクトで筑波大学に留学。モンゴル国立教育大学から言語学の博士号を取得。慣用句を中心に日本語とモンゴル語の翻訳について理論的に研究。現在、モンゴル文化教育大学で日本語を教える。


翻訳単位としての慣用句
(――等価性を中心として――)

 本発表では、翻訳単位の特性を考慮し、慣用句の翻訳が翻訳単位としてどんな地位を占めるかという点を考察する。そのために、コンテキストの等価性を接点として慣用句の翻訳に使用されている各方法を分析してする。これによって、慣用句は言語起源を関係なく、根本的に四つの翻訳方法によって実現されており、それぞれ定められた等価性のレベルを示している他、等価性の階層関係と規則的関係にあることを主張する。この結果は、慣用句は意味の大きさではコンテキストと匹敵する翻訳の独特な単位である点を意味する。また、翻訳に携わっている言語の類型の違いにも関わらず、相当訳、直訳、類推訳、説明的訳などといった四つの普遍的な操作によって実現されていることが示唆される。このようなことから、翻訳のプロセスを言語学的、心理言語学的、認知言語学的観点などを併用させて、等価性を接点として分析すれば、統合的レベルの考察が可能になることを主張する。
(この発表はシンポジウムに先だって13:50-14:20に行われますのでご留意ください)